循環器内科
循環器内科の概要
循環器内科は、胸部不快、不整脈感、呼吸困難感、浮腫等、などの症状を呈する疾患の鑑別診断から、狭心症や心筋梗塞、心不全、不整脈などの心臓疾患、下肢動脈狭窄(重症下肢虚血を除く)や静脈血栓症などの血管疾患、肺塞栓症や肺高血圧症などの肺血管疾患をはじめとして、循環器疾患全般の診療を行っています。
急性心筋梗塞や急性心不全、不整脈発作などに対する急性期医療・救急医療に携わるとともに、慢性期の疾患増悪を防ぐため、維持治療中の患者様についても定期的に病状評価を行いながら、かかりつけ医の先生方と連携して治療方針の共有と維持治療の調整を続けています。
一方で、患者様の生活の回復や再発の予防は、一つの臓器の治療だけでは実現できないことを強く実感するとともに、維持期の治療も患者さんや家族が続けていける内容であることが必要であると考えています。
当科の最大の特徴は、患者やそのご家族を支えていく多職種チーム医療体制がしっかり稼働している事です。手術や薬物治療は病状を回復しますが、その病状に至る原因となった体質や習慣までは改善してくれません。当科ではこれらを実現するため、多職種からなる心臓血管ケアチームCCT が、個々の患者の状態に応じて実際に行える生活アドバイスや社会的サポートの調整を行い、患者やそのご家族を支える事に力を注いでいます。また、CCT では循環器業務における心臓リハビリ、心不全ケア、心臓カテーテル検査・治療、心電図モニタリング等も多職種でサポートしています。
診療技術のトピック
- 心房細動に対するカテーテルアブレーション治療
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心房細動は、何らかの介入を要する(事が多い)不整脈としては、最も身近な不整脈です。ある統計データでは、日本人の1~2%(約100-200 万人)が心房細動と推定され、また近年増加傾向にあるとの事です。
心房細動に求められる治療は、①血栓リスクの評価と予防、②動悸等症状の改善、③心不全合併例に対する治療が挙げられます。但し、①~③についても患者ごとで適応は異なり、診断時点では何の治療も必要ないという方もいらっしゃいます。一方、頻回の動悸症状や、心不全の原因となっている患者の中には、その改善を目的に近年は積極的にアブレーション治療が選択される事が多くなってきました。その背景には、この治療法を支持するエビデンスが増えてきた事や、より安全な手技成功のための情報が整ってきた事があります。しかし手技を安全に行うには、他のアブレーションと比べるとより十分な準備と手技への精通が求められます。
当院はこれまで、心房細動のアブレーションは他院にお願いしていましたが、年々多くのご紹介を頂く中で自院でも実施できないか検討してきました。そして2023 年より、他施設でも治療経験の豊富な医師を招聘し、開始を実現できました。特に安全性に関わる術中麻酔については、多くの施設で循環器内科医が行っている中、当院は麻酔科医の管理として安全性に拘りました。引き続き、①~③について丁寧に診察させて頂き、適応がありましたらアブレーションも当院にお任せ頂ければと存じます。
- 冠微小循環障害の診断
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微小血管狭心症をご存知でしょうか?従来、心臓の表面にある冠動脈に狭窄や攣縮がある狭心症を、それぞれ労作性狭心症(器質的冠動脈疾患)、冠れん縮性狭心症(機能性冠動脈疾患)と定義し、診断・治療が行われてきました。しかし、これらの異常がみられないにも関わらず、胸痛の症状を訴える患者が一定数おられ、その中には明らかに心筋虚血を疑うにも関わらず異常がみつからないという事で、以前よりシンドロームX 等と呼ばれる事もありました。
シンドロームX は冠微小血管の様々な異常(血管抵抗亢進、拡張反応障害、れん縮等)に起因するのではないかという事までは推測されていましたが、最近になり冠血流予備能(CFR)や冠微小血管抵抗指標(IMR)をカテーテル検査により簡便に測定する機器が使用できるようになり、微小血管の異常の有無を診断できるようになりました。これらの異常は、冠微小循環障害(CMD)と呼ばれるようになり、特徴として比較的女性(特に閉経前後)に多く認められ、胸痛は労作時のみならず安静時にも生じ、10 分以上持続する事もあり、典型的な狭心症症状とは異なる事もあります。ニトロが無効な例もあり、治療はカルシウム拮抗薬やβ遮断薬などが推奨されています。
当院では2023 年よりこれらを測定する機器を導入しました。現在この診断を行えるのは県内では当院含め2 施設のみとなります。このような胸痛でお困りの患者がおられましたら、是非一度ご相談いただければと存じます。
狭心症の新たな分類 詳細は「2023 年 JCS/CVIT/JCC ガイドラインフォーカスアップデート版 冠攣縮性狭心症と冠微小循環障害の診断と治療」を参照下さい。
- 冠動脈内圧測定(FFR, iFR, SyncVision)
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これまで冠動脈狭窄は冠動脈造影画像上での高度狭窄に対して血行再建術が行われていましたが、実際には血行再建術をおこなわない方が良い場合が多く含まれていることが知られるようになりました。当院では冠動脈内圧測定を行って本当に治療の必要な病変かどうかを確認して治療適応を決定しています。
- ロータブレータ
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冠動脈の石灰化が著しく冠動脈形成術を阻む場合でも、石灰化部分を赤血球より細かく粉砕して削りながら狭窄部を拡張できる装置がロータブレータです。県内では心臓血管外科が併設されていない施設としては初めて使用できるようになりました。
- MRI
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心肥大、心筋症、心筋障害などにおいて、非侵襲的に質的評価が行えるのが心臓MRIです。特にガドリニウムを使用した遅延造影を用いるなどで、心筋生検等のリスクの高い検査を行わずともある程度まで心筋疾患の鑑別が可能となっています。
当院は、近年植え込まれるようになった条件付当院は、近年植え込まれるようになった条件付MRI 対応ペースメーカ・植込み型除細動器等のMRI 撮影が可能な施設基準を満たしており、これらの患者のMRI 撮影にも対応しています。
- リードレスペースメーカ
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従来の永久ペースメーカは、植え込み時に前胸部皮膚を切開し血管内にリード(ペースメーカ信号を伝える電線)を通して心臓内まで導入し、本体を皮下に埋め込む必要がありました。リードレスペースメーカは心臓内に本体を直接留置するため、術後安静、創部感染、日常での上肢動作や異物感、携帯電話の使用などにおいて従来型より優れています。心臓血管外科が併設されていない施設としては県内で初めて植え込みできるようになりました。
当科にて行っている主な検査
狭心症・心筋梗塞関連
- 運動負荷心電図
- 心肺運動負荷試験
- 心臓CTアンギオ検査
- 冠動脈造影
- 冠動脈内圧測定検査
- 冠れん縮誘発試験
- 微小血管狭心症の診断
不整脈関連
- Holter心電図
- 7日間Holter心電図
- Holter心電図
- イベントレコーダ
- 植込型心電図記録計
心不全、弁膜症・心筋症関連
- 心エコー図検査
- 経食道心エコー図検査
- 体組成分析
- 心臓MRI検査
- 心筋生検
血管疾患関連
- 末梢動脈エコー検査
- 末梢静脈エコー検査
- 頚動脈エコー検査
- MRアンギオ検査
- 血圧脈波検査
当科にて行っている手術治療など
- 冠動脈インターベンション(ステント留置術、ロータブレータ、再狭窄抑制型バルーン治療、など)
- 末梢動脈インターベンション(ステント留置術、再狭窄抑制型バルーン治療、など)
- 大動脈バルンパンピング゙、経皮的心肺補助(V-A ECMO)、体温管理療法法
- 永久ペースメーカ移植術・交換術(リードレスペースメーカを含む)
- カテーテルアブレーション(心房細動、心房粗動、上室性頻拍、心室頻拍)
- ASV(適応補助換気療法)、CPAP(持続陽圧呼吸療法)、HOT(在宅酸素療法) 等
2023年実績
- 急性心筋梗塞患者
- 45人
- 心不全入院患者
- 139人
- 冠動脈造影
- 146件
- 冠血流予備能測定
- 67件
- 冠微小血管抵抗指標測定
- 17件
- 冠動脈インターベンション
- 85件
- 末梢血管インターベンション
- 5件
- 永久ペースメーカ移植術・交換術
- 47件
- 心臓リハビリテーション新規導入患者
- 110人(のべ5,828件)